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映画の徒然メモ。他サイトでのログを移植中
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オスカー保持者が三人集まった―――というだけでは正直別に「ふーん」止まりなのだが(すみません)(でも個人的注目度は「ラジー賞受賞者が3人集まった!」映画の方が高いです)、メンツが確かにすごい吸引力。トミー・リー・ジョーンズが出てるだけで奇声を発したいくらいだと言うのに、スーザン・サランドン!ラブ!!そしてシャーリーズも出たての頃から好きなんだ。『イーオン・フラックス』劇場観賞して後悔しなかったくらいには好きなんだ。しかも監督がポール・ハギスだしな!観ない理由がないんだぜ。

というわけで観てまいりました。今回は結論を先に書いておく。観てください。

あらすじ>>>
2004年、ハンクの元に息子のマイクが軍から姿を消したと連絡が入る。イラクから戻ったマイクが基地へ戻らないというのだ。ハンクも引退した元軍人だった。息子の行動に疑問を持ったハンクは基地のある町へと向かう。帰国している同じ隊の仲間たちに聞いても、皆マイクの行方を知らなかった。やがてマイクの焼死体が発見されたという連絡が入る。ハンクは地元警察の女刑事エミリーの協力を得て、事件の真相を探ろうとするが…。

[オススメするタイプ]
・若者
・故意空(誤変換)とか観ちゃってる若者
・『ミリオンダラー・ベイビー』に何かを感じた人

[オススメできんタイプ]
・いちぶのたぐいのわかもの(悲しいことにただのつまらん映画としか思えないだろう)
・今ちょっと鬱な人

実話をベースにした物語。というか、文章でつづられる限り、限りなく実話の流れと近い。しかしそれでいて、確実に着実に「物語」にしているポール・ハギスの手腕は今回も健在だ。
苗字を聞く度にこれが浮かんで「ウプー」となってしまう(各方面に失礼)のは最早どうしようもないとして、この人が関わる映画に外れ無し!と個人的に思っている次第。大傑作ばかりを生み出す、まで手放しで褒めるつもりも無いけれど、観た後に必ず「ああ…」と心の中が何かでいっぱいになる感じだ。憎い人だ。

ストーリーは一貫して主人公ハンクの視点で進む。軍人一家に育ったハンクには、息子が無断で基地を脱走するなど信じられない。良くも悪くも「軍」に形作られた人間であり、寄り添ってきた人。それが如実に現れているのが、モーテルで靴を磨き、ズボンの皺をとるシーン。易々と観客に軍の宿舎を想像させる一連の行動は、この人がある意味、自然にいまだ軍に生きている人だということを見せつける。
そしてもうひとつ、息子が死体で見つかった後に妻と電話をするシーン。長男は既に軍人として亡くしているため、妻は叫ぶ。「ひとりくらい残してくれたって!」当たり前だが、夫が殺したわけじゃない。それでも―――「女の言いそうなこと」だと思うかもしれないけど―――あながち的外れな批判ではない気がするのだ。ハンクは軍の人間だった。だから息子は軍の人間になった。ならば息子が軍で死んだなら、母親はどうするか?やはり、幾ばくかは父親に責任を求めてしまうんじゃないのかな。これもまた、うかつな感想ではあるのだけれど。

その母親を演じるスーザン・サランドンが素晴らしい。ほんのチョイ役、と本人がインタビューで笑っていたように、大女優を使うにしては出番も少なく、もったいない気もする。でも、彼女が演じたことで確実にこの映画は変わった。
息子の遺体を見たときの表情。廊下を歩いていく背中。背中だけ、足取りだけなのに、茫然とした状態からやがて現実として知覚し、それが脳に届いて泣き崩れる―――その数秒間の感情の移り変わりが、あまりにも見事。あの廊下シーンは、映像として素晴らしすぎる。必見。

そしてシャーリーズ。淡々とシングルマザーの刑事を演じる、化粧っ気のなさが魅力。
カラダで昇進したんだろ、と極めて「現場の男」らしい嫌がらせを受けつつ、真摯に生きている。何てことのないワンシーンだけど、残業している彼女に同僚が「お先に」と言っていくシーンがとても好きだ。この殺人事件は、別にドラマティックでも何でもなく、彼女が受け入れられていく下地を作った事件でもあった。
どんなものにも現実があって人生があるんだな、と当たり前のことをここでも思う。

ハンクを演じるトミー・リー・ジョーンズは言わずもがな素敵。この人こういう人なんだ、と肩の動きひとつでも観客に実感させてしまう。ストーリー上ほとんど表情が厳しいものから変わらないけれど、コーヒーショップで「マダム」に声をかけられたときの笑顔にキュンとした。この人の笑顔は卑怯だ。本当に卑怯だ!(コップを机に叩きつけながら)

脇を固める役者もいい。ハンクを案内する軍曹に、ジェームズ・フランコ。お前いい役ゲットしたな!と友人気取りで肩を叩きたくなる。(何様だ)でも正直、最初わからなかった。すまんフランコ、私は君を髪型で区別していたようだ…剃られるとわからない…。
軍隊仲間を演じる面々にも実際に軍人経験者がいたりして、リアルさをかもし出している。まあ、ぶっちゃけてしまえば映画は本物を使うことよりも「如何に本物らしく見えるか」を重要視するものではあると思うけれども。でもやはり、何処と無く感じるリアルさが、本作には重要だ。

彼らは、普通の若者だ。
彼らは、真面目で未経験で愚かで若くて―――つまりはただの若者だ。
何ひとつ違いは無い。勿論、「被害者」や「被害者の家族」にとってはそれだけではない。けれども、やっぱり彼らは皆、普通の若者だった。
戦争に正義など無い。勝ったり負けたりするのは実体の無い「国」というモノで、傷つくのは個人だ。何にも違うところの無い、恨みなど抱きようも無い個人同士が殺し合う。平和時にひとり殺せば殺人犯だけれど、戦争で百万人殺せば英雄だ。
戦争は人を狂わせる。軍隊仲間のひとりが言う、「イラクなんて核で吹き飛ばせばいい」は、非人道的だと批判するのは簡単だけど、でもそうではない真実が込められていた。あれは紛れも無く彼の本音で、残虐でもなんでもない若者が、本心からそういう言葉を言ってしまう状況が間違っているのに。

戦争は駄目だ。
そんな単純な言葉で言い表すことが出来る、そんな事実をこの物語は突きつけてくる。

でも、そんな当たり前のことを、いつから映画に教えてもらわなきゃ実感できなくなったんだろう?
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